2015年5月13日水曜日

ある看護学生さんとのメールの往復

ある看護学生さんとのメール往復を紹介します。
ほぼ原文のままですが、句読点など一部改変しています。
(掲載許可を戴いています)
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【前略】
私は看護学生で今、助産師になる勉強をしています。
リプロダクティブ・ヘルス/ライツに興味があり、
ruriko_pillton さんのツイートを見て、
ピルやノルレボについて考えるようになりました。
今回メッセージを送ったのは、
今日【注:日曜日】あった出来事をどうしてもruriko_pilltonさんに伝えたかったからです。
【中略】
今日の夕方ごろ、大学生になったばかりのいとこから、
「金曜の夜に、彼氏の友達にレイプされた。
ゴムはつけたと相手は言うけれど、
もしかしたらと思い心配で電話をした。
親には相談できないし、どうしよう。」
と泣きながら電話がありました。
すぐに緊急避妊が必要だと思い、
医療ネットに連絡し二次救当の病院を紹介してもらおうと思いました。
しかし、その病院には産婦人科はなく対応は難しいということで、
日曜の午後もあいている産婦人科クリニックを探してもらいました。
そのクリニックもあと30分ほどで閉まってしまうということで、
いとこを急いで連れて行きました。
無事に薬を処方してもらい、本人も少しだけ安心した様子でした。
今回のことがあってノルレボを市販薬にすることが、
女性にとってとても重要であると気付きました。
もし、どこの病院もやっていなかったら、
もし電話が来たのが夜中だったら、
と考えると恐ろしいです。
日曜や夜間に対応できる病院は少ないです。
そういった場合にすぐに緊急避妊薬が手に入るようにしなければ、
女性は自分を守れません。
値段が高すぎること、副作用や他の薬との飲み合わせなどをどう指導していくかなど、
まだまだ課題はたくさんありますが、
望まない妊娠を避け女性が心身ともに健康に生活していくには、
避妊に対してのアクセスがもっと簡単になされることが必須だと思い知りました。
文章が読みにくい上に、長文になってしまい申し訳ありません。
しかももう夜中なのにm(__)m
私も助産師のたまごとして、
女性がもっと健康に生きられるように少しでも力になれたらと思います。
これからもツイート楽しみにしています。
ここまで読んでいただいて、本当にありがとうございました!

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【返信】
【※※】さん、こんばんは。
メッセージ読ませていただきました。
いとこさん、妊娠を避けれるといいですね。
現在、中絶は公式統計で約20万件です。
(実際はその倍程度あるでしょう。)
20万件の女性達のほとんどは、
「やばい」と思いながら放置してしまったのです。
実は「やばい」と思いながら放置する女性は、
数百万人いるんですよ。
(私の試算では400万人。1回の性交渉による妊娠率は5%なので。)
400万件の必要に対して、ノルレボの処方数は10万強です。
これでは、中絶数削減効果は焼け石に水程度です。
ノルレボへの理想的アクセスが実現すると、
年間中絶数は5万件以下に減少します。
市販薬化が必要と考える理由です。
市販薬化されている国では、 病院等での処方がなくなっているわけではありません。
病院等の「等」ですが、 重要なのは若者向けのリプロセンターです。
以前ブログに町の女性保健室のことを書いたことがあります。【注:こちら
こういう施設が必要だと思っています。
ちなみに、リプロセンターでピルや緊急避妊薬を処方しているのは、
資格を持った看護師が普通です。
400万件の需要に産婦人科医だけで対応できませんものね。
資格を持った看護師に日本で相当するのは、
助産師さんや保健師さんです。
【※※】さんがノルレボを処方する時代が必ず来ますよ。
以上です。 ===================================================================

以下、感想です。
いとこさんの事件は金曜日でした。
もし彼女に緊急避妊の知識があれば、
病院の開いている土曜日に受診することが可能だったでしょう。
彼女には緊急避妊の知識がなかったのかもしれません。
学校教育の中で緊急避妊について教えていることは稀です。
生理の始まった全ての女性に緊急避妊の知識を広めていく必要があります。

彼女が緊急避妊について知っていたかどうかは不明ですが、
知っていることと行動は必ずしも一致しません。
高い値段や産婦人科の敷居が、
受診を躊躇させてしまうことは少なくありません。
この事例では幸いなことに背中を押してくれるいとこさんがいました。
身近な女性の後押しは、躊躇している女性を励ます大きな力になります。

望まない妊娠を減らしていくことは、
一般に考えられているほど容易ではありません。
自分の身体を守るという意識が女性の間に育たなくては、
望まない妊娠を減らしていくことはできないからです。
知識だけでなく、意識を変えていく必要があります。
避妊への高いアクセス障壁のもとでは、
自分の身体を守るという意識は育ちません。
だれでも必要な避妊にアクセスできる環境があってはじめて、
自分の身体を守るという意識は育つものです。

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